インド神話に登場する神・インドラが所有していた伝説の武器です。
インドラはこのヴァジュラを用いて自在に雷を操っていたそうで、
インドラが操る雷自体をヴァジュラと呼ぶ説もあるようです。
また、日本にも奈良時代から平安時代にかけて中国からヴァジュラが伝わったと考えられており、
日本では、バサラまたは、金剛杵という名称で知られています。
日本においては、武器という意味合いよりかは、真言宗、天台宗、
禅宗の儀式などに使用される法具の意味合いが強いようです。
形状に関して、インド神話内では、その形状は詳細に言及されていませんでした。
ただ、「恐ろしげな姿」とだけ伝えられています。
今の形状は、ガンダーラ美術のヘラクレス像の棍棒をモデルにしていると思われ、
現在の三又に分かれた棍棒の姿がインドに流用されたと考えられています。
刃の形状や数によって12種類のバージョンがあり、それぞれ名称も異なっています。
インド文化圏の言語でダイアモンド、雷電の意味を持つvajra、vajramなどが由来だと思われます。
日本の金剛杵という呼び方もここからきていると思われます。(非常に硬い金属という意味で)
インド神話に「ヴリトラ」という蛇の姿をした巨大で無敵と言われる強さを持った怪物がいました。
ヴリトラはその巨体で水をせき止め、雨を降らさないようにし、人々や神々を困らせていました。
これに憤りを覚えたインドラをはじめとした神々は、ヴリトラを退治しようとしましたがヴリトラの力は強大で、
まったく歯が立ちません。
そこでインドラたち神々はヒンドゥー教の創造神である・ブラフマーにヴリトラ討伐の助言を聞くことにしてみました。
ブラフマーは「タディーチャという偉大な聖仙に骨をください。
と頼めば、タディーチャはその身を捨てて自分の骨を差し出すだろう。
その骨でヴァジュラという武器を作り出すのだ!そのヴァジュラならばヴリトラをきっと倒せるだろう!急いで行きなさい!」
と助言しました。
インドラは急いでタディーチャの住処に赴き、タディーチャに骨をもらえないか頼みました。
タディーチャは「わかりました。お役に立てるのなら、この私の骨をあなたに捧げます。」と喜んでこの願いを聞き入れ、
タディーチャは、息を引き取りました。
インドラはタディーチャの骨を取り出し、すぐに工匠であるトヴァシュトリを呼び出し、
ヴァジュラを作成するよう指示しました。トヴァシュトリは一心不乱にヴァジュラ製作に取り組み、
ついに神器・ヴァジュラを完成させました。
インドラはそのヴァジュラを用いて雷を操り、
ヴリトラ撃退を試みますがヴリトラは神器ヴァジュラを用いてもたやすく倒すことはできませんでした。
それを見かねた維持神であるヴァシュヌがインドラ、ヴリトラの間に割って入り、和平協定を結ぶ提案を出します。
ヴァシュヌの提案にインドラは賛成しますが、ヴリトラは賛成する代わりにある条件を提示します。
それは、和平を結ぶ代わりに、「乾いたものでも、濡れたものでも、石や木材によっても、
通常の武器でもヴァジュラによっても、
昼も夜もインドラはじめ神々によって自分が殺されることのないように危害を加えないようにしてもらいたい。」
というものでした。
ヴァシュヌはこれを受け入れその場は一旦和平を結びます。
しかし、これはヴァシュヌの策略でした。
ヴァシュヌはインドラにこう言います。
「インドラよ。お前のそのヴァジュラにこの私を入れろ。ヴリトラを殺すぞ。」
ヴァシュヌの策略を聞き、インドラはこう返します。「それで、どのように殺すのですか?」
ヴァシュヌは「分からぬ。だが、必ず勝機はある!」
そうして、インドラはヴァジュラにヴァシュヌを封じました。
そして、とある明け方、海辺でヴリトラ撃退の作戦を考えていたところ、インドラの前にヴリトラが現れます。
そこで、インドラはひらめきます。
「今がチャンスだ!!」そう、今は昼でも夜でもない明け方。それに海には乾いたものでもなく、
濡れたものでもない泡がある!そう考えたインドラは、ヴリトラに向かって海の泡を投げつけました。
するとその泡に乗じてヴァジュラから封じていたヴァシュヌが飛び出しました!
「死ね!ヴリトラ!」ヴァシュヌに刺されヴリトラは殺されます。
結局撃退したのはインドラではなく、ヴァジュラに入っていたヴァシュヌでしたが、
この功績によりインドラは「ヴリトラハン」(ヴリトラ殺し)の称号を得ます。
雷属性
タツノコプロによる日本のテレビアニメ「天空戦記シュラト」に登場する主人公シュラトの武器としてヴァジュラ、
正式には三鈷杵が登場する。
インド神話を題材に異世界でシャクティという鎧を装着し、
激闘を繰り広げる格闘アニメで聖闘士星矢などの影響を受けているアニメのようです。
雷帝インドラが反乱を起こしインドラを打倒するため奮闘していきます。
武器の属性は光。
谷菊秀原作、黒岩よしひろ作画の日本漫画「鬼神童子ZENKI」にもヴァジュラという単語が登場。
こちらの作品は1995年にアニメ化されています。
主人公の前鬼はその強靭な身体能力と金剛角と呼ばれる破邪の力を持った武器で戦う。
ヒロインである役小明による呪力「ヴァジュラ」を用いて力の封印を解きパワーアップし、形態を変化させるようです。
大人気ハンティングゲーム「ゴットイーター」シリーズに大型の敵の一つとしてアラガミ「ヴァジュラ」が登場する。
大型の虎のような姿をしたアラガミで、初代ゴットイーターのパッケージを飾った看板モンスターでした。
その体躯には似合わない俊敏な動きの多様な攻撃を繰り出し、爪や突進による格闘戦のほか、
電撃を用いた遠距離攻撃、範囲攻撃も得意とする隙のない強敵です。
ゴットイーターの小説内の説明では、「生物として純粋に強いため、ベテランのゴットイーターでも後れを取ることがある。」
と言われています。
その他、ファイナルファンタジーシリーズや人気カードゲーム「遊戯王」、
「デュエルマスターズ」などの作品で登場しています。