フェイルノートは使えば狙った獲物に必ず当たるという表現がなされており、
原本にarcという弓なりの形状を示す単語が使われています。
そこから「無駄なしの弓」や「必中の弓」といった異名も持っています。
そのことからフェイルノートはトリスタンの持つ弓を指すものとして広まっていきます。
ですが、ベルールの著した原本のトリスタンとイズー以外に登場するトリスタンはこのフェイルノートを所持はおろか制作した
という記述も出てこないことが多いのです。
現代ではトリスタンといえばブリテンの伝説である「アーサー王伝説」に登場する円卓の騎士、
「サー・トリスタン」としての姿のほうが有名でしょう。
このトリスタンは竪琴を改造したような弓を持つとされ、この弓も必中の力があったとされます。
話が少々変わりますが、アーサー王伝説にはトリスタンを始めとした円卓の騎士が槍を用いて試合をするシーンがあります。
実はここでトリスタンが多くの円卓の騎士に勝利を収めており、槍の名手としての描写も存在します。
実はフェイルノートがトリスタンの武器や技術として活躍したという記述は非常に少なく、
ベルール版のトリスタンとイズーにおける二人の森での隠遁生活と、
ベルール版の最後のシーンにマルク王の重鎮に対して矢を射掛けて殺害する場面くらいしかなく、
その二幕でしかトリスタンが明確に弓矢を使ったと読める場面がないのです。
それ以外ではトリスタンはもっぱら剣を使って戦うシーンか、
アーサー王伝説では先に述べたとおり槍を使うのに優れていたとするシーンが多く、弓を使って戦った記述は多くありません。
このようにフェイルノートはその名前こそ多くの人に認知される武器なのですが、
武器として例えば「エクスカリバー」や「ガラティーン」のように特別活躍した武器ではないように思えます。
そのためなのかフェイルノートという弓はアーサー王伝説では存在に言及はされますが、
あまり活躍は描かれませんし、原本のトリスタンとイズーにしてもベルール版かそれを忠実に訳した作品以外では登場しないの
です。
そして原本においても登場するシーンが少なく、そもそも本当に弓なのか、武器の名称なのかすらわかっていないのです。
ではこの「フェイルノート」とは一体何なのでしょうか。
話は少々外れますが、中世フランスではベルール版のトリスタンとイズーを元にした韻文のトリスタン物語が存在します。
これらをトリスタンとイゾルデの長大なロマンス作品としてまとめたのが現代に伝わる「トリスタンとイゾルデ」という物語で
あり、この物語が出来上がったのと同時期にトリスタンの物語はアーサー王伝説の中に組み込まれます。
アーサー王伝説に組み込まれて以降もトリスタンが狩りに長けた人物であるという表現は残っており、
そこで弓としてのフェイルノートは登場しますが、活躍らしい活躍はあまり描かれていません。
またフィリップ・ヴァルデール著「アーサー王神話大辞典」ではトリスタンに対し「狩人」や「狡知に長けたもの」というキー
ワードを用いています。
このことからや原典での描写からフェイルノートは実は弓や武器の名前ではなく、
狩りや狡知に長けたトリスタンが考案した狙った獲物を確実に仕留める罠や技法の名称のことではないかと考えられるのです。
さらには原本において最後のシーンで王の重鎮を弓矢で射殺す場面がありますが、
ここでは弓矢に「l'arc qui ne faut」という表現が使われていないようです。
これもまたフェイルノートがトリスタンの持つ罠やその制作の技法であるとする声の根拠だと言えるでしょう。
このようにフェイルノートとは現代ではトリスタンを象徴するアイテムとしての地位を確立しているのにも関わらずその正体は
謎に包まれたアイテムなのです。
風属性
トリスタンの象徴的なアイテムであるフェイルノートですが、
アニメやゲームではどのように登場しているのかをご紹介していきます。
まずはDELiGHTWORKS発の大人気スマホゲーム「Fate/Grand Order」より「痛哭の幻奏(フェイルノート)」です。
こちらはゲーム内に登場する「トリスタン」の宝具として登場します。
これはトリスタンが使用していた竪琴の糸の形を取り、爪弾くことで真空の刃を飛ばすことができます。
次はSEGA発のオンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2」より「フェイルノート」です。
こちらは弓のような形をしていますがその実は柄の両側に刃のついた「ダブルセイバー」という武器で登場しています。
最後はスクエアエニックスから「ファイナルファンタジー11」より「アキヌフォート」です。
こちらは弓として登場しており、入手が若干面倒な武器になっています。
登場ゲーム作品
Fate/Grand Order
ファンタシースターオンライン2
ファイナルファンタジー11