「ロスタムの兜」とはペルシアの叙事詩であり「王書」とも呼ばれる「シャー・ナーメ」に登場する
英雄「ロスタム」が身につけていた兜のことです。
ロスタムはイランの英雄であり、イランのためにその生涯をかけて戦い続けました。
その戦う対象は「トゥーラーン(中央アジア付近)」であったり、人間ではない「化け物」との戦いもありました。
ロスタムは「シャー・ナーメ」においてイラン国王である「カーウース」を救うべく、
白い鬼である「Div-e Sepid」の脳と血を飲ませなければならず、
Div-e Sepidを倒すために悪鬼の国「マザンダラン」に向かいます。
このときにDiv-e Sepidとロスタムはお互いに死を覚悟したまさに死闘を演じます。
そのときにロスタムはDiv-e Sepidを投げ飛ばして地面に叩きつけ、
手に持った短剣でDiv-e Sepidを突き殺します。
その結果として国王は救われることになります。
ロスタムの兜はこのDiv-e Sepidの頭で作られており、これこそがロスタムが国王を救い、
イランの勝利を象徴するアイテムであり、更にはロスタム自身を英雄であると証明する物品でもあるのです。
しかしながらこのロスタムの兜自体にはなにか特殊な能力があったと言う記述は特に見られません。
このロスタムの兜を手にするまでの工程にこそ意味があり、
その工程を終えて王を救ったロスタムには実に700年と言う長大な寿命がもたらされてもいます。
ある意味ではこのロスタムの兜は試練を終え、人を超越したものとしての証だとも言えるのかもしれませんね。
このようにロスタムがロスタムたる証だともいえるロスタムの兜ですが、
ロスタムの兜自体になにか特殊な能力があるという記述は見られず、
なにかこの武具自体が特殊なもので物語の根幹に関わってくると言うような物品ではないようです。
そのため、このロスタムの兜自体が重要というよりかはロスタムの兜をかぶっている
この者がイラクを守る大英雄にして人を超えたものである「ロスタム」である、
と言った風にロスタムをロスタムたらしめることこそがこのロスタムの兜の物語中の役割であるように思えます。
そのため、この項ではロスタムがロスタムの兜を手に入れる工程である
「七道程(ハフト・ハーン)」に関してご紹介していきます。
成長したロスタムは仕えているイランの国王であるカーウースが白い鬼の王Div-e Sepidと戦争をして、
苦境に立たされていることを知ります。この苦境から王を救い出すためにロスタムは7つの試練に挑むことになります。
これが「七道程(ハフト・ハーン)」です。
この「七道程(ハフト・ハーン)」の第一の試練は餓えた獅子との戦いなのですが、
このときはロスタム自身は戦わず彼の馬である「ラクシュ」と言う「竜馬」ともいわれる巨大な馬が戦います。
ロスタムが旅の途中で寝ていると獅子がやってきて、寝ているロスタムの代わりにラクシュが戦うことになるわけです。
ラクシュは獅子の頭を蹴り飛ばして地面に倒して背中を引きちぎって殺してしまいます。
またこのラクシュはロスタムが騎乗するのに唯一耐えられる馬でもあります。
第二の試練は灼熱の砂漠であり、ここではロスタムは水を得ることができずに死にかけます。
しかし、ロスタムが神に祈ると牝羊が現れてロスタムを水場に導き、それによってロスタムは命をとりとめます。
第三の試練はロスタムと龍の戦いであり、牝羊に導かれた水場でロスタムが眠っているとそこに龍が現れます。
実はこの水場は龍が集まる場所だったのです。ロスタムはラクシュに起こされると龍と戦い、
龍の首を刎ねて打ち倒すことに成功します。
第四の試練はロスタムが魔女の誘惑に抗う話です。ロスタムは魔物の国に入ってDiv-e Sepidのもとに向かう道中で泉を見つけ、
そこで一休みします。その泉の近くに酒とギターが置いてあったのでロスタムは酒を呷り、ギターを引き始めます。
そこにどこからともなく一人の美女が現れ、二人は意気投合します。
しかし、語らううちにロスタムが神の名を口に出すと女は怪訝な顔を浮かべます。
それを怪しんだロスタムは女を拘束すると、女は正体を表し醜い魔女の姿になります。
そのためロスタムは魔女の胴を両断して殺します。
第五の試練はどこまでも続く闇の世界を進んでいくことでした。ロスタムには進むべき道が一切見えません。
そのため、ラクシュに進む方向を完全に任せることで闇の世界を脱します。
そこでこの地方の領主を捕虜にして道案内をさせます。
第六の試練は悪鬼達の指揮者である「アルザング」と言う魔物との戦いでした。
アルザングの指揮下の悪鬼たちにカーウース王は捕らえられていました。
ロスタムはアルザングの陣営に雄叫びを上げながら突撃し、
あっという間にアルザングを捕らえ、頭と胴を引きちぎってしまいます。
その後に残った悪鬼を全滅させてカーウース王を救出することに成功します。
第七の試練は遂にDiv-e Sepidとの決戦になります。どうにか王を救出したロスタムでしたが、
王は暗闇の牢獄に換金されていたゆえに失明してしまっていました。
王を治すためにはDiv-e Sepidの脳と血を飲ませる必要があり、これを得るためにロスタムはDiv-e Sepidを倒すことに決めます。
ロスタムは日が昇ると同時にDiv-e Sepidとの決戦を始めます。ロスタムはDiv-e Sepidの片腕片足を剣で切断し、
序盤こそ有利に戦いを進めていきますが、Div-e Sepidはそれを意に介さずロスタムを攻め立て、
そのうちに素手での殴り合いになっていきます。そしてロスタムはDiv-e Sepidを投げ飛ばして短剣で止めを刺します。
ロスタムはDiv-e Sepidの頭をもぎ取り、王にDiv-e Sepidの脳と血を与えて王を治療します。
残った頭を兜に変えて「ロスタムの兜」を手に入れたわけです。
ロスタムはこの「七道程(ハフト・ハーン)」を乗り越えたことで長大な寿命を手に入れ、
のちのイランをも守るために戦い続けるのです。
闇属性
ロスタムの兜自体は余りアニメやゲームでは登場していないようです。
しかしその持ち主であるロスタムやロスタムの兜の材料になったDiv-e Sepidはゲームに登場しています。
まずロスタムですが、スクウェア発のRPG「ルドラの秘宝」に主人公の友人として「ロスタム」が登場します。
また、Div-e Sepidの方は同じくスクウェア・エニックス発のMMORPGである
「ファイナルファンタジー11」にモンスターとして登場します。
ただしこの「Div-e Sepid」はロスタムの兜をドロップしたりはしません。
登場ゲーム作品
ルドラの秘宝
ファイナルファンタジー11